コラム 神奈川vs埼玉vs千葉vs東京西部vs区部

就職して13年、いろんな巡り合わせで、引っ越しを繰り返し、それぞれ全てが趣の異なる地域、6カ所に住む経験をした。会社の工場研修で半年行った岩手の北上を除けば、府中、川崎市川崎区、横浜日吉、埼玉浦和、東京本郷と、東京を中心としたそれぞれ方向が全く異なる主要都市を経験した。実家がある群馬、妻の実家である千葉、弟の住居の柏、茨城を含めれば、東京大都市圏のほぼ全方向にゆかりができた事になる。さらに、地図好きかつ、散歩、自転車、車での相当な散策を繰り返した事で、来た頃は全くつかめなかったこの大都市圏のスケール感も、おおむね頭の中に収まった。今ならナビ無しでも東京圏だったらおおむねなんとかどの方向にも行けると思っている。

東京圏の面白いところの一つとして、人が集まったときに住んでいる場所がものすごく多様なので、住んでいる場所の話をするだけで相応な時間盛り上がれるところ。本やネットでもそうだが、ありがちなのはどこが一番かを競い合う地域戦争。神奈川vs埼玉vs千葉vs東京西部vs区部。たちが悪いのは、それぞれがそれぞれの地域にしか住んだ事がないと、相対的な比較ができないので永遠に決着はつかない。まさに戦争である。

そこで、それぞれ2年づつくらいだが、実際に住んで生活してきた実感をもとに、自分なりに各地域を比較してみようと思う。地方出身者という目線が存分に入っている。

神奈川
神奈川はラビリンスだ。地図散歩好きの視点でそこを見ると、その複雑な街並みは東京を余裕で凌駕する。複雑な稜線に無理やり建てられた住宅の数。完全にスプロール化して渋滞のなくならない細い道。地形、道路、トンネルマニアからするとたまらないのだが、マニアでもない人たちはなぜこんな坂だらけ、道も複雑な不便な街に憧れるのか。利便性で言ったら、おそらく間違いなく埼玉の方が利便である。それでも皆が憧れる横浜、神奈川ブランドはどこから来るのか。でもやはり、マニアでなくても、地図好きでなくても、この曲がりくねってどこに続くかもわからない道が入り組む不思議な街だからこそ、他にはない特殊性を感じて面白さを感じたり、愛着を持つのかもしれない。もしくはただ単に、田園にも畑にも使えない丘陵地が高度成長期に大規模確保しやすかったために、デベロッパーがまとめて開発してブランド化しただけという気もするが。でもやはりいいところは自然が多いところだろう。宅地化されている地域も実はちょっと横に入ると驚くような自然や昔ながらの風景が残っている。こんな探検精神を刺激されるのも魅力の一つかもしれない。

埼玉
一言でいうと便利な街である。道は広いし、整備されているし、ショッピングモールも、郊外のロードサイドショップも、駅前デパートも便利で行きやすい。新幹線の駅も大宮という接続の良い中心駅を起点として、東京にも東北、新潟、長野、北陸まですぐに行ける。鉄道の路線も東京に対してまっすぐだ。神奈川に比べても、東京に親和性が高いのでその意味で都会的かもしれない。いい具合に地域性や味のある駅前も多い。群馬や東北などの大きな川と田園地帯をベースとした平地出身の人から見ると、めちゃくちゃ落ち着く場所である。他の県に比べて個性がないと思われがちだが、それは逆に一つ一つの街に個性がありすぎて、県としてまとまれないから。浦和、大宮、川口、蕨、越谷、所沢、川越、飯能、すべてが個性的な街である。横浜、川崎といったビックシティばかりが目立つ神奈川とはそもそも成り立ちが違うのだ。

千葉
千葉には住んだことはないが妻の地元なので何度も行っている。印象としてはいい意味で、すべてが”千葉”である。県名も県庁所在地も公立高校の名前も、挙句の果てに千葉駅の近くに千葉神社があったのには笑った。埼玉と戦争になることが多いが、そもそも構成が違いすぎて比較できないと思う。大宮と千葉を比べたら千葉の方が規模が大きいが、埼玉は小さい街の集合なので浦和や川口を足せば埼玉が勝つだろう。でも千葉駅周辺の規模感は好きだ。東京圏のなかで、仙台や神戸と言った地方政令都市のいい意味でコンパクトになんでもまとまっている歩きやすい街が形成されているのは千葉市だけだと思う。横浜は横浜駅とみなとみらい、関内、伊勢佐木町など、規模が広すぎでこういったまとまりはない。

東京西部
地方出身者憧れの街だ。若者、サブカルチャー、漫画、ドラマ、映画、地方にいた頃に読んだり観たりしたフィクションの世界の舞台はほとんど東京西部が舞台になっていた。高校の頃初めて中央線に乗って見た永遠に続く住宅の海は忘れられない。東京に出てきて府中の寮に住んでいた頃は、毎週のように下北沢に通った。都心に住んだ今も、わざわざ西荻窪まで散歩に行く。休日をのんびり過ごすにはいい街だ。中央線沿線は最後まで残った私の中での憧憬の街である。

東京区部
東京区部はブラックホールだ。そしてもっともローカルな場所である。なぜなら、東京の中心で生活しているともうほとんどそこから出る必要がなくなってしまうから。東京以外に住んだ事がない人は、電車で2〜30分でつく大宮や横浜や千葉をめちゃめちゃ遠い場所だと思っている。東京で生まれた人は、生まれてこのかたそこから出た事がない人も多い。これを田舎者と言わずして、なんと言おうか。
しかし、だからこそなのだが、東京は人と人とののつながる機会が多い。ローカルで人が多くて狭いから、近所のつながりもできやすいし、人との交流がもっとも盛んになる。お祭りも、昔ながらの商店街、銭湯、建物が多く残っている。手の届く範囲でのローカルでコンパクトな生活。それはとても心地のいいものだ。

どれが一番かいいかと聞かれたとしたら、決まって答えるのは、今住んでいるところが一番いいところだということ。それは、今住んでいる東京本郷という意味ではなく、その時に住んでいるところが一番いいと本当に思っていたからだ。それなのになぜこんなに引越しを繰り返すのか・・・。いろいろな事情、都合があったのは確かだが、根底に流浪の精神があるのだろうと思う。今住んでいるところは気にっているので、もう引っ越すつもりはさらさらないのだが、実はいままでどこに住んでいた時もそう思っていた。こうやって、同じ通勤圏内でもいろいろな個性的な地域に住めるのが東京大都市圏の一番の魅力だなあと感じております。

お気軽にコメントください

タグ:

カテゴリー:Pick Up↑ / ライフログ / コラム

コラムの最新記事